幼児からはじめるSTEAM教育
私たちは「新しい教育の常識をつくる」という理念のもと、子どもたちがAI社会で『イキイキと活躍するための教育』の研究と実践に取り組んできました。
特に力を入れいているのがSTEAM教育です。
2013年10月に「テクノロジーを活用したアート教室」というコンセプトでステモンをスタートし、今では全国3000名を超える子どもたちに独自のSTEAM教育を提供しています。
当時はまだSTEM教育やSTEAM教育という言葉は知られていませんでしたが、最近注目が集まり、文部科学省や経産省も教育改革の一丁目一番地に置いているといっても過言ではありません。
そんなSTEAM教育について、パイオニアとして取り組んで来たステモンの解釈やポイント、注意点などをご紹介します。
STEAM教育とは
科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)。アート(Art)、数学(Mathematics)の5つの領域の頭文字を合わせたのがSTEAMです。
理数ITの力だけでなく、個性を大切にしながらアート・表現の力も育んでいく学びです。
AIをはじめテクノロジーを活用する力が重要であると同時に、人として豊かに生きることの重要性が見直された社会背景が、STEAM教育への関心を集めました。
アートを入れずにSTEM教育と表記することもありますが、このSTEM教育自体も個性を大切に自由な創作活動が根底にありますので、ほぼ同じ意味と解釈してよいでしょう。表現することやデザインの力をより強調した表記がSTEAM教育となります。
STEAM教育ではどんなことをするのか?
5つの分野の総称であることから、とても広い領域をカバーする学習であることがわかります。
"STEAM教育を学ぶ"といっても、定まった形式があるわけではありません。また、発達段階に合わせて変える必要があります。
STEAM教育は幼児から高校、大学に向けて実践できる分野ですが、幼児には、図形に親しんだり、数の概念を理解したり、キャンパスにお絵かきをしたりする活動が主でしょう。
一方で高校生や大学生向けのSTEAM教育となると、例えば天気や気温などのデータを集め、分析したり、音楽を音の波長として数値化し、人の心にどのような影響を与えるのか? さらには部屋の色やレイアウトも組み合わせるとどのような関係があるのか、などとても幅広く、基礎的な学力から、より実践的な研究や問題解決に活かせるのがSTEAM教育の特徴です。
日本のSTEAM教育の現状
現時点(2021年1月)に公教育では実践できているところはほとんどありません。広尾学園やドルトン東京、駒込学園、開智、宝仙などの一部の私学では実践がはじまりました。
日本でのSTEAM教育はまさにこれからはじまる、という状況です。
2020年から小学校にてプログラミング教育が必修化となり、これはSTEAM教育の一部と捉えることはできますが、プログラミング教育自体が全国の小学校のほとんどでスタートを切れていません。
しかし、安倍政権時代にGIGAスクール構想が2019年11月に閣議決定され、子ども1人1台のパソコンが配備されることになりました。
新型コロナの影響も追い風になり2020年9月から全国の小学校に一気に整備が進み、2021年3月にはほぼ完了する見込みです。
2019年まではおよそ5.5名の児童に1台のパソコンだったのが、わずか1年で1人1台になります。これはとても大きな躍進です。
GIGAスクール構想だけでは日本のSTEAM教育は進まない理由
1人1台のパソコンが整備されますが、学校の先生たちがプログラミングやSTEAMを教える体制になるには多くの課題があります。
これは学校の先生たちの問題というよりも、日本の教育制度の構造的な問題と言えます。
いままでの「国語・算数・理科・社会・図工・音楽・体育」といった教科のなかではSTEAMを学ぶことはできません。教科の再編をする必要があり、これは2030年の次の学習指導要領改定を待つ必要があるでしょう。
また、子どもたちがSTEAMを学ぶ際に「パソコンを家に持ち帰ることができる」ことが肝にもなります。
家庭でオンライン学習ができるだけでなく、「STEAMを探究するサイクル」を継続させるために、自分のパソコンを家に持ち帰ることが重要なのです。
しかし、自治体によってこれに対する考え方は異なります。今後の課題になるでしょう。
STEAM教育の重要なキーワードは「探究」
STEAM教育は、いわば「学びの枠をつくらない」と表現できます。
“科学”一つとっても広い範囲ですが、それに数学や芸術が加わるとなれば納得いただけるのではないでしょうか。
STEAM教育を学ぶとは、教科の枠組みを越えて学ぶことで、重要なのは「探究サイクル」です。
①興味を持って活動し、
②「なぜだろう?」と疑問が思い浮かび、
③仮説を持って調べ、
④新しい発見をする。
そしてまた新しい「なぜだろう?」が思い浮かぶ・・・
この循環をし続けることがSTEAM教育には重要であり、探究し続けることで、子供たちは教科の枠組みはひょいっと軽く越えていくことになります。
これを「受験にはあまり役にも立たなさそう」と想起する方がいるかもしれません。
社会で活躍するための力こそこの「STEAMを探究するサイクル活動」で育むことができますし、都市部の私立中学受験の問題は、教科の枠組みを越えたSTEAMの考え方を求める試験に変わってきています。 ※実際に「STEM入試」に切り替えた中学も出てきいます。
STEAM教育は、いかに「探究」し続けることができるかが最も重要なキーワードだと考えています。この視点からも、やはり日本教育は教科の再編が次の課題ですね。
STEAM教育を教える先生に求められる力
STEAM教育を学ぶには、先生たちには大きな発想の転換が必要です。
こちらの記事「教師1.0から教師3.0へ」でご紹介のとおり、
「一斉講義型の授業」から、「個別の学びのコーディネーター」という視点で関わることが求められるでしょう。
自分が知っていて「教えてあげることができる」という手法はSTEAM教育にはフィットしません。
「どのような道具と環境を用意すれば、子どもたちの探究サイクルは続くだろうか?」という発想に変える必要があります。
ステモンが大事にしている学習理論の1つに「フロー理論」があります。夢中になっているときは時間の概念を忘れ、集中して深く思考し、幸福感も得られるというものです。
ステモンは子どもたちが長い時間フロー状態にいられるかという視点で環境づくりを行っています。学校現場でも、このような発想とスキルが求められてくるでしょう。
STEAM教育で扱う教材
STEAM教育は自由度が高いとはいえ、1から好き勝手に活動さえることは避けるべきで、枠組みやカリキュラムは必要となります。
探究サイクルを効果的に進めることができるSTEAM教育の教材もいろいろ出てきました。
microbitやロボット教材、ブロック教材、電子教材などです。最近ではボードゲームやカードゲーム形式のものもあります。
8歳くらいまでの子供はパソコン操作が苦手などがありますので、発達段階に合わせて教材を選ぶとよいでしょう。
ステモンでは5歳から12歳を対象に年間40回の活動がありますが、8歳以下はパソコンは使いません。ブロックや電子教材、簡易的なロボット教材を使用しています。
また、野外活動もとても有効です。自然に触れることで様々な物理現象を学んだり、科学やアートに触れることでいろんな気づきを得ることができます。
ご家庭では、ぜひ公園や野山に遊びに行くなどの外遊びをさせるのがよいでしょう。
STEAM教育を学べるところと料金
STEAM教育は柔軟性豊かな5歳から12歳からはじめると効用が高いと考えています。
この年代でSTEAMを学ぶには、現時点では民間の習い事のみと言えるでしょう。
私たちステモンは少しずつ全国に展開をはじめていますが、ステモンがない地域でもアート教室や造形教室、プログラミング教室、ロボット教室などで近しい学びができると思います。
レッスン料金の相場は月額1万程度が多いようです。上級生になっていくと、1万3000円ほどもよく見かけます。一部の教室では、入会時にロボットなどの高額(5万円程度)な教材費がかかるようです。
各教室の方針は様々ですので、
「個性を大事に探究サイクルがまわるSTEAM教育なのか?」
という視点で見ると比較しやすいでしょう。
例えば「手順書通りに制作」という活動が中心ですと自由度が乏しいですし、ロボットやブロックを他の子供とシェアするのは、「夢中になって没頭する」ことの妨げになります。
少人数生(1クラス6人〜8人程度まで)かもポイントになります。
"夢中"を邪魔されないためにも1人1台のロボット教材でじっくりゆっくりつくる活動ができるかも重要でしょう。
多くの子供たちに良質なSTEAM教育を体験してほしいと願っています。
私たちステモンも、STEAM教育の実践者として日本中の子どもたちに広めていけるように、これからも取り組んで参ります。